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患者は80歳男性。肝門部領域胆管癌疑いで当科紹介となった。血液検査では肝胆道系酵素の上昇を認めたが、Bil、IgG4や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった。腹部CTでは左葉優位の肝内胆管拡張を呈しており、左肝管から肝門部にかけて造影効果を伴う壁肥厚を認めた。MRCPでは肝門部に狭窄を認めた。PET/CTでは壁肥厚部にSUVmax 3.1のFDG集積を認めた。その他、領域リンパ節にFDG集積を認めたが、明らかな遠隔転移はなかった。局在診断のために経口胆道鏡を用いたERCPの方針とした。総肝管からの造影では左肝管は描出されず、右肝管から肝門部にかけて壁不整を認めた。胆道鏡では肝門部に不整な潰瘍性病変を認めた。右肝管の観察を試みたが、管腔が狭く深部挿入が不可能であった。潰瘍性病変からの生検では明らかな悪性所見は得られなかったが、画像所見から肝門部領域胆管癌cT2N1M0 cStageⅢBと診断した。十分なインフォームドコンセントを行った後に、拡大左葉切除術を施行した。切除標本では肝門部の胆管壁、壁周囲にリンパ球・形質細胞を主体とし、一部では好中球や好酸球を伴う炎症細胞浸潤を認めた。また、不規則な線維化があり、一部の胆管では内腔の狭窄を伴っていたが、腫瘍性病変は認めなかった。肝門部胆管周囲ではIgG4陽性細胞が散在性に確認されたが、閉塞性静脈炎は認めなかった。鑑別としてIgG4関連硬化性胆管炎やPSCなどを挙げたが最終診断についてご討議いただきたい。
O-08 術前診断が困難であった肝門部胆管狭窄の1例
◯天野 彰吾1)、末永 成之1)、浜本 佳織1)、矢田 祥子1)、
津山 高典1)、松井 洋人2)、永野 浩昭2)、田中 英3)、
河野 裕夫3)、高見 太郎1)
1)山口大学大学院 医学系研究科 消化器内科学、2)山口大学大学院 医学系研究科 消化器・腫瘍外科学、3)山口大学大学院 医学系研究科 病理形態学講座
患者は80歳男性。肝門部領域胆管癌疑いで当科紹介となった。血液検査では肝胆道系酵素の上昇を認めたが、Bil、IgG4や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった。腹部CTでは左葉優位の肝内胆管拡張を呈しており、左肝管から肝門部にかけて造影効果を伴う壁肥厚を認めた。MRCPでは肝門部に狭窄を認めた。PET/CTでは壁肥厚部にSUVmax 3.1のFDG集積を認めた。その他、領域リンパ節にFDG集積を認めたが、明らかな遠隔転移はなかった。局在診断のために経口胆道鏡を用いたERCPの方針とした。総肝管からの造影では左肝管は描出されず、右肝管から肝門部にかけて壁不整を認めた。胆道鏡では肝門部に不整な潰瘍性病変を認めた。右肝管の観察を試みたが、管腔が狭く深部挿入が不可能であった。潰瘍性病変からの生検では明らかな悪性所見は得られなかったが、画像所見から肝門部領域胆管癌cT2N1M0 cStageⅢBと診断した。十分なインフォームドコンセントを行った後に、拡大左葉切除術を施行した。切除標本では肝門部の胆管壁、壁周囲にリンパ球・形質細胞を主体とし、一部では好中球や好酸球を伴う炎症細胞浸潤を認めた。また、不規則な線維化があり、一部の胆管では内腔の狭窄を伴っていたが、腫瘍性病変は認めなかった。肝門部胆管周囲ではIgG4陽性細胞が散在性に確認されたが、閉塞性静脈炎は認めなかった。鑑別としてIgG4関連硬化性胆管炎やPSCなどを挙げたが最終診断についてご討議いただきたい。
