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PS-6(O-14) 多発肝転移をきたした膵漿液性嚢胞癌の1例

◯深井 翔太
自治医科大学附属さいたま医療センター


【背景】 一般に良性とされる膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)はごく稀に悪性化する。
【症例】 70代女性。4年前にS状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行(T4a, N0, M0, StageII)。同時に膵体尾部に6 ㎝のSCNが指摘されおり、術後CTで膵SCNは徐々に増大傾向であった。造影CTで肝S4, S7にともに7 ㎜大の低濃度腫瘤あり、造影MRIではT1WIで低信号、T2WI、拡散強調で高信号、辺縁優位の造影効果を示し典型的な大腸癌肝転移の所見ではないが否定できないため肝部分切除術を施行し、病理組織検査で両病変とも淡明な胞体を有する腺上皮細胞の増殖あり、免疫染色でCK(AE1/AE3),CK7, EMA, MUC1, MUC6, NSE陽性、CK20, MUC5AC, CDX2陰性でありSCNと診断されたため、膵漿液性嚢胞腺癌の多発肝転移と診断、腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行。膵標本の病理結果は肝転移病巣と一致し膵漿液性嚢胞腺癌と診断した。
【考察】 現在のWHO分類では、膵SCNは膵漿液性嚢胞腺腫と膵漿液性嚢胞腺癌に分類され、その中で「SCNの悪性診断は明確な遠隔転移を有する症例に限定」されており、検索する限り膵漿液性嚢胞腺癌は17例しか報告されておらず極めて稀である。また遠隔転移の多くは肝臓が多く、局所切除で長期生存が見込まれるとの報告もある。今回我々は稀な症例を経験し画像と病理所見を含め悪性を示唆する所見について討論したい。