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O-16 術前に膵上皮内癌との鑑別困難であった顆粒細胞腫の一例

○池田 恵理子1)、菅野  敦1)、三輪田 哲郎1)、安藤  梢1)2)
長井 洋樹1)、 横山 健介1)、笹沼 英紀3)、玉田 喜一1)
佐田 尚宏3)、福嶋 敬宜2)
1)自治医科大学 内科学講座 消化器内科部門、2)自治医科大学 病理診断部、3)自治医科大学 外科学講座 消化器一般移植外科部門


 特記すべき既往歴のない58歳、男性。上腹部痛、血液検査での膵酵素上昇を認め、急性膵炎の疑いで当院に紹介となった。入院時の造影CTでは、膵体部周囲に脂肪織濃度上昇を認め、急性膵炎と診断した。また、膵体部に主膵管狭窄を認め、尾側の主膵管拡張を伴っていたが、腫瘤は認識できなかった。EUSでも主膵管狭窄部周囲には腫瘤は指摘できなかった。MRIのT1強調画像では主膵管狭窄部に一致して低信号を示す腫瘤が僅かにあるようにも見えたが、同部位の拡散低下は認めなかった。膵上皮内癌による限局性主膵管狭窄を鑑別に挙げ、主膵管像の観察並びに膵液細胞診目的にERPを施行することを検討したが、膵炎後であったことを考慮し、ERPを施行せずに膵中央除術を施行した。術後検体造影・術後超音波検査を用いて主膵管狭窄部をマーキングし病理検索を行った。病理組織学的には、主膵管周囲の膠原線維の間に粗大顆粒状で好酸性の胞体を伴う異型細胞が不規則に増生していた。腫瘍は概ね膨張性発育を呈していたが、所々で小葉間結合組織に進展していた。免疫染色では、S100やPAS、Vimentin、CD68が陽性で顆粒細胞腫と診断した。主膵管・分枝膵管上皮には異型を認めず、膵実質の萎縮や脂肪化・線維化も認めなかった。主膵管周囲の膠原線維内で腫瘍が増大したことにより圧排性に限局性主膵管狭窄を来したと推測した。限局性主膵管狭窄の画像所見における良悪性の鑑別に関して議論させていただきたい。