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O-25 主膵管拡張に先行してスリット状の膵実質萎縮を認めた膵上皮内癌の1例

○山雄 健太郎1)、高田 善久2)、水谷 泰之2)、石川 卓哉2)
大野 栄三郎2)、高見 秀樹3)、小川 浩4)、竹原 康雄4)、八木 春奈5)
川嶋 啓輝2)
1)名古屋大学病院 光学医療診療部、2)名古屋大学病院 消化器内科、3)名古屋大学病院 消化器外科2、4)名古屋大学病院 放射線科、5)名古屋大学 病理診断科


 症例は75 歳、男性。主訴はなく、既往歴には糖尿病と胃癌術後。嗜好歴は飲酒ビール1 本/日、喫煙なし。身体所見に特記事項なし。2021.4 胃癌の術後経過観察目的のCT にて主膵管拡張を指摘され、精査目的に当科紹介となった。CT では膵頭体移行部に主膵管狭窄および尾側膵管拡張を認めたが、明らかな腫瘤像は指摘できず、主膵管狭窄部に膵実質の限局性萎縮(くびれ)を認めた。MRCP では膵体部に主膵管狭窄像を、EUS では主膵管狭窄とその周囲に淡い低エコー像を認めるものの明らかな充実性腫瘤像は認めず。これらの所見から微小膵癌を疑い確定診断目的にSPACE を施行した。膵液細胞診は陽性で微小膵癌と診断し手術を施行、最終病理診断はpTisN0M0, Stage 0 膵癌であった。本症例は胃癌の術前精査目的のため4 年5 ヶ月前からCT 撮影歴があり、過去の画像の見直すと、膵癌手術時の膵辺縁のくびれは胃癌手術時にも指摘でき、以降6 か月毎のCT では片側性のスリット状の陥凹像が緩徐に進行・顕在化し、最終的には両側性のくびれに変化していた。一方で、主膵管拡張の所見は2021.4 まで指摘できなかった。膵頭体移行部は健常人でも狭小化していることが多いが、本例では4年以上前から膵実質のくびれを指摘し得た。臨床上の疑問として、このくびれが生理的なものか、癌出現に先行して発生したものかを議論いただきたい。