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O-27 診断に苦慮した肝間葉系腫瘍の1例

○青沼 宇倫1)、吉澤 恵理子1)、大彌 歩1)、山田 哲1)、山崎 智生2)
清水 明3)、副島 雄二3)、玉田 恒4)、上原 剛4)、藤永 康成1)
1)信州大学医学部 画像医学教室、2)信州大学医学部 内科学第二教室、3)信州大学医学部 外科学第一教室、4)信州大学医学部 病態解析診断学教室


 症例は50 歳台女性。腹部膨満感を主訴に前医受診し、肝腫瘤を指摘され精査目的に当院紹介となった。
 CT で肝S8 ドーム下に径14 ㎜の低濃度腫瘤を認めた。造影早期相で腫瘤内部は辺縁が弱く造影され(A)、中心部は造影効果が乏しかった(B)が、腫瘤周囲にリング状の強い濃染が見られた(C)。リング状濃染域と腫瘤内部に脈管構造を認め、肝静脈への早期灌流を認めた。腫瘤辺縁(A)は後期相にかけて遅延性に増強された。MRI 脂肪抑制T2WI で腫瘤内部は高信号(A)~著明な高信号(B)を呈し、EOB 肝細胞相では腫瘤内部は全体的に低信号を示した。FDG-PET/CT で腫瘤に一致して非常に強い集積が見られた。混合型肝癌、未分化肝癌、肝内胆管肝癌、炎症性偽腫瘍、血管筋脂肪腫などが鑑別に挙がったが特定に至らず、診断・治療目的に肝部分切除が施行された。
 肉眼的には境界明瞭な白色の充実性腫瘤で、光顕像では核・細胞質比の高い異型細胞が特定の構造をとらずに集塊状に増殖し(A)、中心部には粘液器質、浮腫、線維化が目立っていた(B)。病変内部にグリソン構造が散見され、置換性発育を示していた。
 免疫染色では上皮性マーカーはすべて陰性で、ERG 強陽性、nestin 陽性であったため、血管内皮由来の腫瘍が考えられたが、CD31 やCD34 の陽性率が低く非典型的であった。CAMTA1、TFE3 陰性のため血管肉腫を考慮するも病理診断に至らず、本研究会にてご意見伺いたいため報告する。