室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。
症例は78 歳女性。倦怠感を主訴に精査を行ない、巨大肝腫瘍を指摘された。血液検査で特記所見なく、肝胆道系酵素および腫瘍マーカーは正常で、肝炎ウイルスマーカーも陰性であった。造影CT 検査で右葉を中心に径15 ㎝大の辺縁平滑、内部不均一な巨大肝腫瘍を認め、造影早期相で辺縁優位に濃染し、腫瘍内部を走行する拡張血管と早期静脈還流像が見られた。EOB プリモビスト造影MRI ではCT と同様の造影動態を呈し、内部に造影効果を伴わない広範囲なT1WI 低信号、T2WI 高信号の領域を認め、腫瘤内に脂肪成分を示唆する所見は見られなかった。非典型的ではあるが肝血管筋脂肪腫を第一に疑い、鑑別として肝細胞腺腫やGIST、NET を想定した。腫瘍の大きさから悪性の可能性を否定できず、門脈塞栓術の後、右葉切除を施行した。手術時間280 分、出血量538g、肝切除量1,474g であった。経過良好で第10 病日で軽快退院。病理組織学的所見は腫瘍細胞が嚢胞状、乳頭様構造を形成して増殖し、豊富な血管を伴っていた。静脈侵襲を認め、悪性腫瘍の像を呈していたが、通常の腺癌や肝細胞癌の形態とは異なっていた。免疫染色ではD2-40(+)、WT-1(+)だが、Calretinin(-)であった。電子顕微鏡検査で腫瘍細胞表面に絨毛構造を認めたことから肝原発悪性中皮腫と診断した。非常に稀な疾患であり、画像・病理所見に議論の余地があると考え報告する。
O-28 診断に苦慮した肝腫瘍の1切除例
○大澤 高陽、深見 保之、鈴木 健太、金子 健一朗、小松 俊一郎、
斎藤 卓也、松村 卓樹、篠原 健太郎、安井 講平、佐野 力
愛知医科大学 消化器外科
症例は78 歳女性。倦怠感を主訴に精査を行ない、巨大肝腫瘍を指摘された。血液検査で特記所見なく、肝胆道系酵素および腫瘍マーカーは正常で、肝炎ウイルスマーカーも陰性であった。造影CT 検査で右葉を中心に径15 ㎝大の辺縁平滑、内部不均一な巨大肝腫瘍を認め、造影早期相で辺縁優位に濃染し、腫瘍内部を走行する拡張血管と早期静脈還流像が見られた。EOB プリモビスト造影MRI ではCT と同様の造影動態を呈し、内部に造影効果を伴わない広範囲なT1WI 低信号、T2WI 高信号の領域を認め、腫瘤内に脂肪成分を示唆する所見は見られなかった。非典型的ではあるが肝血管筋脂肪腫を第一に疑い、鑑別として肝細胞腺腫やGIST、NET を想定した。腫瘍の大きさから悪性の可能性を否定できず、門脈塞栓術の後、右葉切除を施行した。手術時間280 分、出血量538g、肝切除量1,474g であった。経過良好で第10 病日で軽快退院。病理組織学的所見は腫瘍細胞が嚢胞状、乳頭様構造を形成して増殖し、豊富な血管を伴っていた。静脈侵襲を認め、悪性腫瘍の像を呈していたが、通常の腺癌や肝細胞癌の形態とは異なっていた。免疫染色ではD2-40(+)、WT-1(+)だが、Calretinin(-)であった。電子顕微鏡検査で腫瘍細胞表面に絨毛構造を認めたことから肝原発悪性中皮腫と診断した。非常に稀な疾患であり、画像・病理所見に議論の余地があると考え報告する。
