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O-30 局在診断に苦慮したインスリノーマの1例

○五十嵐 聡1)、林 和直1)、小川 光平1)、名古屋 拓郎1)
寺井 崇二1)、滝沢 一泰2)、若井 俊文2)、佐藤 航3)、加藤 卓3)
梅津 哉3)
1)新潟大学医歯学総合病院 消化器内科、2)新潟大学医歯学総合病院 消化器・一般外科、3)新潟大学医歯学総合病院 病理部


 症例は40 代女性。X 年10 月低血糖による意識障害で近医に救急搬送された。前医CT で膵体部の多血性腫瘤を認め、インスリノーマの診断で当科に紹介された。
 CT で膵体部頭側に多血性腫瘤と膵頭体部に乏血性領域を認め、MRI で体尾部がDWI 軽度高信号であった。選択的動脈内カルシウム注入法(ASVS)で脾動脈近位、胃十二指腸動脈、背側膵動脈で陽性となり、膵頭部~体部領域に原因病変の存在が示唆された。EUS で膵体尾部実質は低エコー、膵頭部~体部にさらに低エコーな領域を認め、主乳頭から主膵管に沿うように体部側へ連続するが、門脈より左側で境界が不明瞭となった。病変の境界は不明瞭で膵全体が低エコーかつ主膵管拡張が目立たないことから、腫瘍が膵全体に広がる可能性も否定できなかった。上部消化管内視鏡で主乳頭に潰瘍性病変を認め、生検でNET と診断された。以上より、乳頭部から膵頭体部のインスリノーマと診断し、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。
 術中迅速診断で膵断端および膵頭部周囲リンパ節がNEC と診断され、追加で膵体尾部切除術を施行された。病理では乳頭部から体尾部にかけて、索状・リボン状配列を示す神経内分泌腫瘍を認めた。核分裂像・Ki-67 index よりNET G2 と診断され、免疫染色でインスリノーマに矛盾しない所見であった。各種画像とASVS による局在診断、切除病理との対比につき議論を頂きたい。