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P-16 若年女性に発生した膵腺房細胞癌の一切除例

○伊藤 光一1)、牛尾 真子1)、福間 泰斗1)、髙橋 翔1)、鈴木 彬実1)
冨嶋 享1)、石井 重登1)、藤澤 聡郎1)、福村 由紀2)、伊佐山 浩通1)
1)順天堂大学大学院 医学研究科 消化器内科学、2)順天堂大学大学院 医学研究科 人体病理病態学


 症例は29 歳、女性。急性胃腸炎と診断された際の造影CT で膵尾部に30 ㎜大の腫瘤とその周囲の脂肪織濃度上昇を指摘された。急性膵炎は否定的であったが、膵腫瘍や腫瘤形成性膵炎が疑われたため精査目的で当科を紹介受診した。腫瘍マーカーはいずれも基準値内であったがAmy 205 U/L, Lip 178 U/L、トリプシン1770 ng/mL, PL-A2 1080 ng/dL、エラスターゼ1 984 ng/dL と膵酵素の上昇を認めた。IgG4 は8.8 ㎎/dL と基準値内であった。造影CT の動脈相では腫瘤辺縁が造影され、遅延性に中心部も造影された。MRI ではT1 で低信号、T2 で軽度の高信号、DWI で著明な高信号であり、腫瘤尾側の主膵管は拡張していた。EUS では一部に被膜様構造を伴う比較的境界明瞭な充実性腫瘤として認識され、内部には嚢胞成分も混在していた。ドプラーで腫瘤内の血流シグナルを認め、ソナゾイド造影では造影後約15 秒で腫瘤全体が均一に濃染された。いずれも多血性腫瘍を疑う所見であった。若年ではあるが、腫瘤形成性膵炎以外に膵腺房細胞癌(Acinar cell carcinoma;ACC)や神経内分泌細胞腫瘍が鑑別として考えられたためEUS-FNA を施行した。N/C 比の高い裸核状の腫大核を持つ異型細胞を認め、異型細胞は正常の腺房細胞の間に分け入るように浸潤しており、ACC が疑われた。膵体尾部切除術を施行し、前述の所見に加えてBcl-10 陽性細胞も認めたため最終病理診断はACC であった(pT2N0M0 stage IB)。術前画像でACC と診断可能であったかどうかについてご検討いただきたい。