室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。


P-18 短期間で明らかな形態変化をきたした膵紡錘細胞型退形成癌の一例

○奥田 彩子1)、山田 玲子1)、前川 有里1)、坪井 順哉1)
丸山 和晃2)、内田 克典2)、早﨑 碧泉3)、栗山 直久3)、水野 修吾3)
中川 勇人1)
1)三重大学医学部附属病院 消化器肝臓内科、2)三重大学医学部附属病院 病理診断科、3)三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科


 症例は70 代男性。多発腎嚢胞で経過観察中であった。2 年前に膵体部に嚢胞性病変を指摘され、当科で精査を施行した。MRI で膵体部に類円形の20 ㎜大単房性嚢胞を認め、主膵管との交通は明らかではなかった。EUSでは嚢胞内部に充実成分や壁在結節は認めず、主膵管との交通も明らかではなかったため、単純性膵嚢胞と診断して経過観察とした。2 年後、経過観察目的のMRI/MRCP で膵嚢胞の増大と嚢胞内に充実性腫瘤の出現を認め、再度当科で検査を行う方針とした。造影CT 検査で、単房性の嚢胞内部に漸増性に造影される充実性腫瘤を認めた。EUS 上嚢胞径は28 ㎜に増大し、内部に20 ㎜大の輪郭が比較的整な腫瘤を認めた。前回同様に主膵管の拡張はなく、主膵管と嚢胞との連続性は描出されなかった。膵管との交通は明らかではないものの、嚢胞内に発生した増大傾向のある腫瘤であり、分枝型IPMN(High risk stigmata)の可能性を第一に、鑑別として退形成性膵癌や非典型的ではあるものの膵内分泌腫瘍の嚢胞変性を考え、脾合併膵体尾部切除を施行した。病理組織学的所見では、嚢胞壁に乳頭状に増殖する異型細胞を認め、また、充実腫瘤部には腺癌成分以外に紡錘型異型細胞の増殖を認めた。以上より、IPMN より生じた膵紡錘細胞型退形成癌と診断した。本症例は、画像上膵管と嚢胞との交通が明らかではなく、最終病理診断の妥当性、画像所見と病理組織の対比について御討議いただきたい。