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【症例】65歳男性。
【現病歴】X年8月に悪寒・腹痛・嘔気が出現し近医へ救急搬送となった。採血で肝胆道系酵素上昇を認め、腹部単純CT検査で胆管拡張を認めたことから閉塞性黄疸の診断となり精査加療目的に当科へ転院となった。
【臨床経過】腹部造影CT検査で造影効果を伴う遠位胆管壁の肥厚、肝側の胆管拡張を認めた。膵頭部の腫大および主膵管拡張を認めたが、明らかな膵腫瘍は認めなかった。内視鏡的逆行性胆管造影では遠位胆管に2 cm長の狭窄を認め、管腔内超音波検査で同部に全周性の壁肥厚を認めた。胆汁細胞診および胆管生検で悪性所見を認められなかったため、腫大した膵頭部に対して超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を施行したところ、adenocarcinomaが疑われた。膵浸潤を伴う遠位胆管癌を考え、同年11月に当院外科で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したところ、切除標本の病理組織学的所見で、遠位胆管と膵頭部に各々の領域を持つ、細胞の形態が異なる腫瘍が認められ、遠位胆管癌と膵頭部癌の重複癌と診断した。現在、術後補助化学療法としてS-1を内服している。
【結語】膵頭部癌と遠位胆管癌との重複癌の報告は稀だが、膵癌の術前化学療法が標準治療となった今日の診療において、その鑑別診断は非常に重要であると考えられる。本症例の術前の画像所見と切除標本を詳細に検討し、今後の診断の一助となるような討論を希望する。
O-08 術前診断が困難であった胆管癌と膵癌の重複癌の1例
○森 智崇1)、小澤 栄介1)、阪口 真千1)、佐々木 龍1)、松尾 諭1)、嶋倉 茜1)、中尾 康彦1)、髙橋 孝輔1)、足立 智彦2)、岡野 慎士3)、中尾 一彦1)
1)長崎大学病院 消化器内科、2)長崎大学病院 移植・消化器外科、3)長崎大学病院 病理診断科・病理部
【症例】65歳男性。
【現病歴】X年8月に悪寒・腹痛・嘔気が出現し近医へ救急搬送となった。採血で肝胆道系酵素上昇を認め、腹部単純CT検査で胆管拡張を認めたことから閉塞性黄疸の診断となり精査加療目的に当科へ転院となった。
【臨床経過】腹部造影CT検査で造影効果を伴う遠位胆管壁の肥厚、肝側の胆管拡張を認めた。膵頭部の腫大および主膵管拡張を認めたが、明らかな膵腫瘍は認めなかった。内視鏡的逆行性胆管造影では遠位胆管に2 cm長の狭窄を認め、管腔内超音波検査で同部に全周性の壁肥厚を認めた。胆汁細胞診および胆管生検で悪性所見を認められなかったため、腫大した膵頭部に対して超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を施行したところ、adenocarcinomaが疑われた。膵浸潤を伴う遠位胆管癌を考え、同年11月に当院外科で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したところ、切除標本の病理組織学的所見で、遠位胆管と膵頭部に各々の領域を持つ、細胞の形態が異なる腫瘍が認められ、遠位胆管癌と膵頭部癌の重複癌と診断した。現在、術後補助化学療法としてS-1を内服している。
【結語】膵頭部癌と遠位胆管癌との重複癌の報告は稀だが、膵癌の術前化学療法が標準治療となった今日の診療において、その鑑別診断は非常に重要であると考えられる。本症例の術前の画像所見と切除標本を詳細に検討し、今後の診断の一助となるような討論を希望する。
