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PS-1(O-10) 粘液産生によるびまん性膵管拡張に伴う微小膵管不整と限局性膵萎縮から診断に至ったHigh-grade PanINの一例

○佐上 亮太1,2)、錦織 英史1)、佐藤 孝生1)、佐藤 啓司3)、藤原 省三4)、大目 祐介5)、樋口 亮太5)、本田 五郎5)、古川 徹6)、村上 和成2)
1)大分三愛メディカルセンター 消化器内科、2)大分大学医学部 消化器内科学講座、3)大分三愛メディカルセンター 病理診断部、4)大分三愛メディカルセンター 消化器外科、5)東京女子医科大学病院 消化器一般外科、6)東北大学大学院医学系研究科 病態病理学分野


 症例は66歳女性.健診の腹部超音波検査で膵管拡張を指摘された.血液検査では特記事項なし.MRIでは明らかな腫瘤を指摘できず,限局性拡散抑制も認めなかった.MRCPでは主膵管はびまん性に軽度拡張しており,膵体部と尾部の一部に分枝膵管の散在性微小拡張を認め,尾部主膵管に一部不整を疑う部位を認めた.腹部造影CTでは膵体部に膵実質萎縮,膵尾部には不自然に拡張する主膵管が偏在しており,限局性実質萎縮を疑う所見であった.実質に一部遅延性濃染を認めた.EUSでは主膵管はびまん性に拡張しており,尾部主膵管の一部に口径不同と付随する分枝拡張と周囲の微小分枝拡張を伴う膵管周囲低エコー所見を認めた.背景膵全体に軽度実質塑像所見を認めた.ERPでは乳頭は開大,膵管内は粘液によると考えられる造影不良域が散在していたが,明かな不整を認めなかった.連続膵液細胞診でHighly suspicious of adenocarcinomaの所見を得たことから,膵尾部限局性High-grade PanINを強く疑い,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的所見としては,全切片の主膵管に粘液産生性の強いLow-grade PanINを認め,尾側1切片の主膵管の一部にHigh-grade PanINを認めた.体部の一部と尾部の病変部位周囲に背景膵の線維化・炎症細胞診純及び腺房細胞脱落を不連続に認め,術前CTで指摘し得た部位と一致していた.膵管拡張,微小膵管不整及び限局性膵実質萎縮から診断に至った希少な症例を報告する.