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PS-2(O-11) 多発膵管狭窄を伴う膵頭部腫瘤に対して膵全摘を行った1例

○丹下 主一1)、白田 龍之介2)、中井 陽介2)、石垣 和祥1)、高原 楠昊1)、日向 宗利3)、中井 雄大4)、市田 晃彦5)、長谷川 潔5)、藤城 光弘1)
1)東京大学 消化器内科、2)東京大学 光学医療診療部、3)東京大学 病理部、4)東京大学 放射線科、5)東京大学 肝胆膵移植外科


 78歳男性。X年2月ドックの腹部超音波検査で膵管拡張を指摘。X+2年4月のMRCPで膵体尾部膵管狭窄が出現し当院紹介受診。X+2年5月造影CTで膵実質は全体に菲薄化傾向で、膵尾部近位の膵管狭窄は認めるものの、腫瘤性病変を認めなかった。血清CEA/CA19-9は正常範囲内、血清IgG4 159mg/dLと軽度上昇を認めた。EUSでは、膵頭部膵実質は正常だったが、体尾部膵管狭窄部の尾側膵管周囲に低エコー領域が疑われ、X+2年11月ERPを施行。膵管造影では膵体尾部膵管狭窄を認めたが、同狭窄部からの分枝膵管の造影も認めた。また、膵頭部膵管の狭窄も認めた。狭窄部擦過細胞診及びSPACEを施行、膵頭部・膵体尾部擦過細胞診はClass3、SPACEではClass2までであったが、膵体尾部擦過液KRAS変異陽性であり、悪性は否定できないと考えられた。膵頭部膵管狭窄はX+2年9月のMRCPで初めて指摘され、造影CTでは同部位に腫瘤性病変と、Replaced RHAへの近接を認めた。EUSでは頭部膵管狭窄近傍に不明瞭な低エコー域を認め、EUS-FNAを施行するも悪性所見、自己免疫性膵炎いずれの所見も認めなかった。以上の結果より、体尾部膵管狭窄部は悪性を否定できず、膵頭部腫瘤は炎症性病変の可能性はあるものの、経時的な増大傾向から癌の否定は困難で、X+3年2月膵全摘を施行。切除検体病理では、膵頭部膵管内にHigh grade PanINを認めると同時に、膵頭部腫瘤および尾側膵管周囲の広範囲に渡って自己免疫性膵炎の所見を認めた。