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80歳女性、膵嚢胞の精査目的に当院を受診した。CT/EUSで膵体部に4cm大の多胞性嚢胞病変あり、造影効果のある最大で7mm大までの壁在結節を3個認め、IPMCを疑い外科的治療の方針とした。約2か月後の術前CT検査で嚢胞隔壁は肥厚し不整になり辺縁は遅延性に造影される領域が出現した。下腹部の腸間膜には境界不明瞭な2cm大の結節病変が出現した。嚢胞周囲の低エコー領域からのEUS-FNAでは軽度の異型細胞を認めるものの悪性所見はなかった。腹膜結節は腹腔鏡下で摘出し、病理所見は高度炎症細胞浸潤を伴った線維化と脂肪壊死を有する病変で炎症性偽腫瘍と診断した。初回診断と同じくIPMCを疑い膵体尾部切除術を施行した。病理所見では嚢胞内に核形不整と核配列の乱れを伴って低乳頭状に増殖する腫瘍細胞を認めたが浸潤所見はなかった。IPMNと診断するかの判断は難しいがhigh-grade PanINと最終診断した。嚢胞周囲の間質には錯綜した線維化が広がり、リンパ球や形質細胞の集簇、閉塞性静脈炎の所見とIgG4陽性形質細胞を多数認めた。また、術前の炎症性偽腫瘍病変の追加免疫染色を施行しIgG4陽性細胞を確認した。術前に血清IgG4値は未測定だが術後の上昇は無く、またIgG4関連疾患としての膵外病変は認めていない。短期間で形態変化したIgG4陽性細胞の集簇した嚢胞病変であり、腹膜の炎症性偽腫瘍との関係、high-grade PanINの診断の妥当性も含め議論していただきたい。
O-19 術前に腹膜結節を伴ったIgG4陽性形質細胞が集簇する膵嚢胞病変の1例
○仲程 純1)、千葉 和朗1)、田畑 宏樹1)、堀口 慎一郎2)、脊山 泰治3)、冲永 裕子3)、原田 庸寛3)、髙尾 幹也3)、神澤 輝実1)
1)がん・感染症センター都立駒込病院 消化器内科、2)がん・感染症センター都立駒込病院 病理科、3)がん・感染症センター都立駒込病院 肝胆膵外科
80歳女性、膵嚢胞の精査目的に当院を受診した。CT/EUSで膵体部に4cm大の多胞性嚢胞病変あり、造影効果のある最大で7mm大までの壁在結節を3個認め、IPMCを疑い外科的治療の方針とした。約2か月後の術前CT検査で嚢胞隔壁は肥厚し不整になり辺縁は遅延性に造影される領域が出現した。下腹部の腸間膜には境界不明瞭な2cm大の結節病変が出現した。嚢胞周囲の低エコー領域からのEUS-FNAでは軽度の異型細胞を認めるものの悪性所見はなかった。腹膜結節は腹腔鏡下で摘出し、病理所見は高度炎症細胞浸潤を伴った線維化と脂肪壊死を有する病変で炎症性偽腫瘍と診断した。初回診断と同じくIPMCを疑い膵体尾部切除術を施行した。病理所見では嚢胞内に核形不整と核配列の乱れを伴って低乳頭状に増殖する腫瘍細胞を認めたが浸潤所見はなかった。IPMNと診断するかの判断は難しいがhigh-grade PanINと最終診断した。嚢胞周囲の間質には錯綜した線維化が広がり、リンパ球や形質細胞の集簇、閉塞性静脈炎の所見とIgG4陽性形質細胞を多数認めた。また、術前の炎症性偽腫瘍病変の追加免疫染色を施行しIgG4陽性細胞を確認した。術前に血清IgG4値は未測定だが術後の上昇は無く、またIgG4関連疾患としての膵外病変は認めていない。短期間で形態変化したIgG4陽性細胞の集簇した嚢胞病変であり、腹膜の炎症性偽腫瘍との関係、high-grade PanINの診断の妥当性も含め議論していただきたい。
