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O-20 診断に苦慮した若年の膵頭部腫瘤の1例

○飯島 徳章1)、芹川 正浩1)、石井 康隆1)、辰川 裕美子1)、中村 真也1)、池本 珠莉1)、上村 健一郎2)、有廣 光司3)、岡 志郎1)
1)広島大学病院 消化器内科、2)広島大学病院 消化器外科、3)広島大学病院 病理診断科


 症例は33歳、女性。腹痛精査のCTで膵頭部に40mm大の腫瘤性病変を認め前医入院した。血液検査では軽度の肝障害を認め、各種腫瘍マーカーはいずれも基準範囲内であった。造影CTでは、膵頭部に乏血性で遅延性に全体が濃染される腫瘤を認め、内部には門脈、総肝動脈、左右肝動脈が巻き込まれていた。MRIでは、腫瘤はT1WIで低信号、T2WIで淡い高信号、DWIで淡い拡散低下を呈していた。EUSでは、辺縁に一部凹凸を伴う境界明瞭な腫瘤として描出され、内部には低エコーと高エコーが混在していた。PET-CTでは腫瘤に一致してSUVmax:17.5の異常集積を認めた。EUS-FNAでは線維性結合組織の小片を認めるのみであった。鑑別診断として膵原発の腫瘍性疾患であるSPNを挙げ、待機的に手術予定であったが、EUS-FNA後の出血が持続したため、治療目的に当院転院し、準緊急で膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理所見では、紡錘形細胞が花筵状、束状に増生する腫瘍組織を認めた。免疫染色ではCD34(-)、c-kit(-)、Desmin(-)、S-100(-)、β-catenin(-)、 ALK(-)であった。組織学的にはデスモイドに類似するが、免疫染色からは否定的であり、その他炎症性筋線維芽細胞腫瘍や孤在性線維性腫瘍、GISTにも合致しない所見であった。 以上より病理診断においても確定診断は得られず、筋線維芽細胞の増生よりなる線維腫症の像と見做さざるを得なかった。診断の妥当性、腫瘍は膵由来か否かについて討論いただきたい。