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66歳、女性。健診目的の腹部USで膵尾部に低エコー腫瘤を指摘され、当院紹介となった。血中CA19-9 が133U/mlと高値であった。造影CTでは膵尾部に内部成分が異なる2つの嚢胞性腫瘤が接して存在し、頭部側は25mm大の単房性嚢胞、尾側に26mm大の腫瘤内部に隔壁様構造を伴う多房性嚢胞から構成され、尾部の一部に石灰化が散見された。MRIでは、単房性嚢胞は厚い被膜を有しT2W1で均一な高信号、T1W1低信号を呈し漿液性成分、多房性嚢胞はT2W1で不均一な中等度信号、T1W1では単房性嚢胞より若干の高信号を呈し粘液性成分が示唆され、隔壁の一部に造影効果を有する壁在結節様構造がみられ、同部位はDWI高信号・ADC低値であった。MRCPでは膵管拡張所見はみなかった。EUSでは単房性嚢胞部は厚い被膜を有する均一な無エコーで、多房性嚢胞部は単房性嚢胞の被膜と連続し内部は均一な等エコーを示した。FDG-PETでは腫瘤部に異常集積はみなかった。以上より、粘液性嚢胞性腫瘍(MCN or IPMN)と貯留嚢胞の併発、鑑別に嚢胞変性を伴う神経内分泌腫瘍などを挙げたが、患者同意のもと腹腔鏡下膵尾部切除術を施行した。摘出病理は、異型に乏しい重層扁平上皮に被覆された嚢胞で、内部には泡沫細胞の集簇、コレステリン裂隙の形成を伴い、嚢胞周囲には脾組織および線維化を有しており、膵内副脾に発生した類表皮嚢胞であった。術前画像診断を再考頂きたい。
O-21 画像診断に苦慮した膵内類表皮嚢胞の一切除例
○吉村 壮平1)、寺部 寛哉1)、内藤 嘉紀2,3)、中山 正道3)、平井 真吾1)、島松 裕1)、赤司 昌謙4)、酒井 久宗4)、田上 利佳5)、岡部 義信1)
1)久留米大学 医学部内科学講座 消化器内科部門、2)久留米大学病院 臨床検査部、3)久留米大学 医学部病理学講座、4)久留米大学 外科学講座 肝胆膵外科部門、5)久留米大学 医学部放射線科
66歳、女性。健診目的の腹部USで膵尾部に低エコー腫瘤を指摘され、当院紹介となった。血中CA19-9 が133U/mlと高値であった。造影CTでは膵尾部に内部成分が異なる2つの嚢胞性腫瘤が接して存在し、頭部側は25mm大の単房性嚢胞、尾側に26mm大の腫瘤内部に隔壁様構造を伴う多房性嚢胞から構成され、尾部の一部に石灰化が散見された。MRIでは、単房性嚢胞は厚い被膜を有しT2W1で均一な高信号、T1W1低信号を呈し漿液性成分、多房性嚢胞はT2W1で不均一な中等度信号、T1W1では単房性嚢胞より若干の高信号を呈し粘液性成分が示唆され、隔壁の一部に造影効果を有する壁在結節様構造がみられ、同部位はDWI高信号・ADC低値であった。MRCPでは膵管拡張所見はみなかった。EUSでは単房性嚢胞部は厚い被膜を有する均一な無エコーで、多房性嚢胞部は単房性嚢胞の被膜と連続し内部は均一な等エコーを示した。FDG-PETでは腫瘤部に異常集積はみなかった。以上より、粘液性嚢胞性腫瘍(MCN or IPMN)と貯留嚢胞の併発、鑑別に嚢胞変性を伴う神経内分泌腫瘍などを挙げたが、患者同意のもと腹腔鏡下膵尾部切除術を施行した。摘出病理は、異型に乏しい重層扁平上皮に被覆された嚢胞で、内部には泡沫細胞の集簇、コレステリン裂隙の形成を伴い、嚢胞周囲には脾組織および線維化を有しており、膵内副脾に発生した類表皮嚢胞であった。術前画像診断を再考頂きたい。
