室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。


P-06 多房性嚢胞状の形態を示し漿液性嚢胞性腫瘍との鑑別を要した膵神経内分泌腫瘍の一例

○高柳 卓矢、松本 彰太、春日 範樹、関野 雄典
横浜労災病院 消化器内科


 症例は43歳男性.健診の腹部エコー検査にて膵頭部に嚢胞性病変を指摘され当科へ紹介となった.造影CTでは膵頭部に32mm大の類円形の嚢胞性腫瘤を認め,内部に隔壁様の構造が認められ多房性嚢胞性病変が疑われた.MRIではT1WIでは低信号,T2WIでは高信号を呈し,MRCPでは主膵管との交通は不明瞭で主膵管拡張は認めなかった.EUSでは辺縁整で境界明瞭,内部に大小の嚢胞を認め,充実成分を疑う低エコー領域を伴っていた.造影EUSでは充実部はhyperenhancementを示した.以上からsolid variantを伴う漿液性嚢胞性腫瘍 (SCN)と判断したものの,嚢胞変性を伴う神経内分泌腫瘍 (NEN)も否定できないため2ヵ月後にMRIでのフォローの方針とした.フォローのMRIにて膵頭部腫瘤は38mm大に増大し,内部に壁に接してT2WIで低信号,DWIにて高信号を示す結節が出現し,同部位は造影CTにて動脈相で濃染を示した.EUSでは前回同様に充実部はhyperenhancementを認めた.以上,画像所見の変化からSCNよりは嚢胞変性を伴うNENを疑い手術適応と判断し膵頭十二指腸切除術が施行された.病理組織学的検査では腫瘍の中心部は,出血と線維化を認め,類円形の核を呈する腫瘍細胞が索状に配列し増殖しており,Synaptophysin,Chromogranin Aが陽性,核分裂像は4/10HPF,Ki-67 indexは10%であり,嚢胞変性を伴ったNEN (G2)の診断であった.
 初回精査時の画像検査にてNENを疑うべき画像所見のポイントを討議したい.