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症例は60代女性.機械飲酒,膵癌の家族歴なし.2022年6月に上腹部痛で近医を受診し,腹部CTで膵体部に嚢胞性病変と周囲の脂肪組織混濁を指摘された.急性膵炎の診断で加療されたが,改善しないため,当院へ転院となった.発熱はなかったが,著明な炎症反応(WBC 12400/µL,CRP26.73mg/dL)を認めた.膵酵素(アミラーゼ 34 U/L,リパーゼ 25 U/L)と腫瘍マーカー(CEA 1.3 U/mL,CA19-9 20.6 U/mL)は正常範囲内であった.造影CT(dynamic study)で膵体尾部に石灰化を伴う胃体部後壁に接した径60㎜の多房性の嚢胞性病変を認め,嚢胞内に壁在結節が疑われた.MRIで嚢胞内の結節部は,T1で高信号,T2で低信号であった.DWIでは高信号,ADC-mapでは低信号であり,拡散制限を認めた.造影EUSで同部は早期に濃染された.ERPで嚢胞腔が造影され,多量の白色膿汁が排出したため,経鼻ドレナージtubeを嚢胞内に留置した.嚢胞内用液の培養でα-Streptococcus,Precltela属が検出された.膵液細胞診はClassⅢbであった.感染を伴った膵粘液性嚢胞腫瘍を疑い,2023年1月23日に膵全摘・脾臓合併切除・胃部分切除を施行した.切除標本では嚢胞壁内に卵巣様間質を認め,結節部に高から中分化型腺癌があり,最終病理診断は膵粘液性嚢胞腺癌であった.今回, 囊胞内に感染を伴った膵粘液性囊胞腺癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
P-11 囊胞内に感染を伴った膵粘液性囊胞腺癌の1例
○田中 利幸1)、後野 徹宏1)、平塚 裕晃1)、伊原 諒1)、丸尾 達1)、植木 敏晴1)、川元 真2)、宮坂 義浩2)、渡部 雅人2)、田邉 寛3)、二村 聡3)
1)福岡大学筑紫病院 消化器内科、2)福岡大学筑紫病院 外科、3)福岡大学筑紫病院 病理部
症例は60代女性.機械飲酒,膵癌の家族歴なし.2022年6月に上腹部痛で近医を受診し,腹部CTで膵体部に嚢胞性病変と周囲の脂肪組織混濁を指摘された.急性膵炎の診断で加療されたが,改善しないため,当院へ転院となった.発熱はなかったが,著明な炎症反応(WBC 12400/µL,CRP26.73mg/dL)を認めた.膵酵素(アミラーゼ 34 U/L,リパーゼ 25 U/L)と腫瘍マーカー(CEA 1.3 U/mL,CA19-9 20.6 U/mL)は正常範囲内であった.造影CT(dynamic study)で膵体尾部に石灰化を伴う胃体部後壁に接した径60㎜の多房性の嚢胞性病変を認め,嚢胞内に壁在結節が疑われた.MRIで嚢胞内の結節部は,T1で高信号,T2で低信号であった.DWIでは高信号,ADC-mapでは低信号であり,拡散制限を認めた.造影EUSで同部は早期に濃染された.ERPで嚢胞腔が造影され,多量の白色膿汁が排出したため,経鼻ドレナージtubeを嚢胞内に留置した.嚢胞内用液の培養でα-Streptococcus,Precltela属が検出された.膵液細胞診はClassⅢbであった.感染を伴った膵粘液性嚢胞腫瘍を疑い,2023年1月23日に膵全摘・脾臓合併切除・胃部分切除を施行した.切除標本では嚢胞壁内に卵巣様間質を認め,結節部に高から中分化型腺癌があり,最終病理診断は膵粘液性嚢胞腺癌であった.今回, 囊胞内に感染を伴った膵粘液性囊胞腺癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
