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P-16 長期経過を観察し得た浸潤性粘液性嚢胞腺癌の一例

○岡田 はるか1)、岩崎 栄典1)、茅島 敦人1)、川崎 慎太郎2)、堀部 昌靖1)、中野 容3)、北郷 実3)、眞杉 洋平4)、金井 隆典1)
1)慶應義塾大学 医学部 消化器内科、2)慶應義塾大学 医学部 内視鏡センター、3)慶應義塾大学 医学部 一般・消化器外科、4)慶應義塾大学 医学部 病理学教室


 50歳, 女性. 13年前に膵尾部に50mmの嚢胞性腫瘍を指摘され, 当院で定期画像検査を行っていた. 腫瘍は経時的に増大し, 5年前に60mmとなり, 嚢胞内出血を示唆する所見を指摘された. 腫瘍辺縁の低エコー領域に対してEUS-FNAを施行をしたが悪性所見は認めなかった. 腫瘍径80mmまで増大し手術の方針とした. 既往歴は特になく, 飲酒・喫煙歴なし. 身体所見は特に異常なく, 自覚症状はなかった. 採血で生化学検査, 腫瘍マーカーは正常範囲であった. CTでは膵体尾部に多房性嚢胞性病変を認め, 内部は不均一で石灰化を伴っており造影効果は認めなかった. EUSでは類円形で辺縁整の多房性嚢胞性病変を認めたが, 内部の石灰化が強く嚢胞全体の描出は困難であった. その他各種画像検査でも悪性所見は示唆されなかった. 最終的に腹腔鏡下膵対尾部切除が施行された. 病理診断は粘液性嚢胞腺癌で, 高~中分化腺癌相当, 一部に間質浸潤を認めた. pStage IB (pT2N0M0)でR0切除であった. 本症例は13年に渡って画像検査のフォローを行い, 膵粘液性嚢胞腫瘍が悪性化する過程をとらえている貴重な症例である. 我々は各種画像検査から漿液性嚢胞腫瘍もしくは充実性偽乳頭状腫瘍を鑑別上位に考えていたが, 最終的に浸潤性粘液性嚢胞腺癌の診断となった. 経時的な画像所見の変化と術後病理画像をあわせて, 術前に診断が可能であったかを検討いただきたい.