室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。
【症例】50歳代女性. 検診の腹部超音波検査で膵頭部に腫瘤を指摘され, 当院を紹介受診した. 腹部造影CT検査で膵頭部に脂肪成分を含む境界明瞭な40 mm大の楕円形腫瘤を認め, 動脈相で造影効果に乏しく,門脈相から静脈相にかけて腫瘍全体が漸増性に造影された. 腹部MRIではT1強調画像out of phaseで脂肪成分の含有が示唆された. 超音波内視鏡検査では辺縁低エコー帯を伴った高エコー像を呈する腫瘍を認め, 内部に微細な低エコー領域を多数認めた. 腫瘤生検では明らかな悪性細胞を認めなかった. 膵神経内分泌腫瘍や後腹膜腫瘍を鑑別診断とし, ご本人とも相談の上, 診断的治療として外科的切除を行う方針とした. 術中に腫瘍の膵外組織への浸潤傾向は認めなかったものの, 膵臓からの腫瘍の剝離は困難で, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 摘出標本では, 膵頭部に30 x 27 x 23 mm大で周囲膵組織との境界が明瞭な黄白色調, 充実性の腫瘤性病変を認めた. 病理組織学的検査で, 腫瘍内部に異型に乏しい小型膵管の密な増生とその周囲に線維性間質の増生を認め, ランゲルハンス島は消失していた. エラスチカワンギーソン染色で小膵管の弾性繊維を認めず, 膵過誤腫と診断した.
【考察】膵過誤腫は稀な良性腫瘍で, 術前診断は困難である. しかし, 疾患概念の確立と認知が広まり, 生検で腫瘍組織を安全に十分量採取する手法が開発されれば, 不要な手術を回避できる可能性がある.
P-20 膵過誤腫の一切除例
○籠浦 正彬1)、杉本 元一1)、小嶋 基寛2)、小林 達伺3)、工藤 雅史1)、小林 信1)、小西 大1)、石井 源一郎2)、後藤田 直人1)
1)国立がん研究センター東病院 肝胆膵外科、2)国立がん研究センター東病院 病理・臨床検査科、3)国立がん研究センター東病院 放射線診断科
【症例】50歳代女性. 検診の腹部超音波検査で膵頭部に腫瘤を指摘され, 当院を紹介受診した. 腹部造影CT検査で膵頭部に脂肪成分を含む境界明瞭な40 mm大の楕円形腫瘤を認め, 動脈相で造影効果に乏しく,門脈相から静脈相にかけて腫瘍全体が漸増性に造影された. 腹部MRIではT1強調画像out of phaseで脂肪成分の含有が示唆された. 超音波内視鏡検査では辺縁低エコー帯を伴った高エコー像を呈する腫瘍を認め, 内部に微細な低エコー領域を多数認めた. 腫瘤生検では明らかな悪性細胞を認めなかった. 膵神経内分泌腫瘍や後腹膜腫瘍を鑑別診断とし, ご本人とも相談の上, 診断的治療として外科的切除を行う方針とした. 術中に腫瘍の膵外組織への浸潤傾向は認めなかったものの, 膵臓からの腫瘍の剝離は困難で, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 摘出標本では, 膵頭部に30 x 27 x 23 mm大で周囲膵組織との境界が明瞭な黄白色調, 充実性の腫瘤性病変を認めた. 病理組織学的検査で, 腫瘍内部に異型に乏しい小型膵管の密な増生とその周囲に線維性間質の増生を認め, ランゲルハンス島は消失していた. エラスチカワンギーソン染色で小膵管の弾性繊維を認めず, 膵過誤腫と診断した.
【考察】膵過誤腫は稀な良性腫瘍で, 術前診断は困難である. しかし, 疾患概念の確立と認知が広まり, 生検で腫瘍組織を安全に十分量採取する手法が開発されれば, 不要な手術を回避できる可能性がある.
