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O-14 重症急性膵炎を契機に診断された小膵癌の1例

○奥田 康博1)、石井 康隆1)、中村 真也1)、池本 珠莉1)、宮本 明香1)、中村 一樹1)、古川 大1)、上村 健一郎2)、有廣 光司3)、岡 志郎1)
1)広島大学病院 消化器内科、2)広島大学病院 消化器外科、3)広島大学病院 病理診断科


 症例は52歳、男性。急性膵炎の精査加療目的に当院紹介となった。造影CTでは膵頭部に限局した膵腫大と造影不良域を認め、膵体尾部主膵管のびまん性拡張を認めた。保存的加療で軽快し、第24病日に退院した。退院から1か月後のCTでは膵頭部の膵実質はほぼ消失し、70mm大の被胞化された液体貯留を認め、膵体尾部の主膵管拡張は増悪していた。膵炎の原因精査を予定していたが、退院から4か月後に膵炎再燃のため緊急入院した。CTでは膵頭部の液体貯留は若干縮小していたが、主膵管の拡張は残存していた。MRIでは膵頭部に有意な拡散低下はなく、膵頭部主膵管に限局的な狭窄と尾側膵管の拡張を認めた。EUSでは膵頭部は境界明瞭で内部不均一な液体貯留に置換されていた。ERPではWirsung管内に8mmの陰影欠損像を認め、同部位のIDUSで膵管内に低エコーな隆起性病変を認めた。擦過細胞診とSPACEはいずれもclass Ⅲであったが、この膵管内の病変が膵炎の原因と考え、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では膵管内を占拠するように乳頭状に増殖する10mm大の非粘液性、高円柱状の高度核異型を伴う腫瘍を認め、膵実質に1mmの浸潤を認めた。免疫染色では、MUC1とMUC5ACが陽性MUC6陰性であり、浸潤性膵管癌 pT1N0M0 Stage IAと診断された。診断の妥当性と腫瘍の進展度診断についてご討議いただきたい。