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症例は50歳代、女性。健康診断の腹部超音波検査で膵の異常を指摘されて当院へ紹介となった。既往症・併存疾患はなく、母が膵癌に罹患した家族歴がある。腹部造影CTで膵尾部に限局性の膵実質萎縮を認め、萎縮部分に遅延性に濃染する領域がみられた。単純MRIでは脂肪抑制T1強調像で膵実質萎縮部分に低信号域を認めた。T2強調像、拡散強調像では同部に信号変化を認めなかった。MRCPでは膵実質萎縮部分において主膵管の狭窄が疑われたが、尾側主膵管の拡張はみられなかった。萎縮部の近傍と、萎縮部から離れた膵体部に分枝膵管の拡張を認めた。EUSでは膵実質萎縮が確認できたが主膵管狭窄部は認識できなかった。膵実質萎縮部の近傍に6mm程度の境界不明瞭な低エコー領域を認めたため、EUS-FNAを行ったところ、少量ながら核腫大した上皮細胞を認め、KRASコドン13に遺伝子変異が検出された。ERPでは挿管困難なため膵尾部の造影は不十分であり評価不能であった。膵液吸引による細胞診では少量の異型細胞を認めるのみであった。細胞診・組織診による診断がついていないが、上皮内癌を含めた腫瘍性の可能性が考えられたため、ロボット支援下膵体尾部切除術を行った。病理組織学的には膵実質萎縮部分の一部に核腫大し不規則に重積した上皮内癌相当の病変を認めた。膵管周囲には腺房の脱落と線維化がみられた。細胞診・組織診で未確定の限局性萎縮病変に対する治療方針について討論を頂きたい。
O-19 膵尾部の限局性萎縮に対して膵体尾部切除術を行った膵上皮内癌の1例
○羽場 真1)、原 和生1)、清水 泰博2)、細田 和貴3)、水野 伸匡1)、桑原 崇通1)、奥野 のぞみ1)、夏目 誠治2)
1)愛知県がんセンター 消化器内科部、2)愛知県がんセンター 消化器外科部、3)愛知県がんセンター 遺伝子病理診断部
症例は50歳代、女性。健康診断の腹部超音波検査で膵の異常を指摘されて当院へ紹介となった。既往症・併存疾患はなく、母が膵癌に罹患した家族歴がある。腹部造影CTで膵尾部に限局性の膵実質萎縮を認め、萎縮部分に遅延性に濃染する領域がみられた。単純MRIでは脂肪抑制T1強調像で膵実質萎縮部分に低信号域を認めた。T2強調像、拡散強調像では同部に信号変化を認めなかった。MRCPでは膵実質萎縮部分において主膵管の狭窄が疑われたが、尾側主膵管の拡張はみられなかった。萎縮部の近傍と、萎縮部から離れた膵体部に分枝膵管の拡張を認めた。EUSでは膵実質萎縮が確認できたが主膵管狭窄部は認識できなかった。膵実質萎縮部の近傍に6mm程度の境界不明瞭な低エコー領域を認めたため、EUS-FNAを行ったところ、少量ながら核腫大した上皮細胞を認め、KRASコドン13に遺伝子変異が検出された。ERPでは挿管困難なため膵尾部の造影は不十分であり評価不能であった。膵液吸引による細胞診では少量の異型細胞を認めるのみであった。細胞診・組織診による診断がついていないが、上皮内癌を含めた腫瘍性の可能性が考えられたため、ロボット支援下膵体尾部切除術を行った。病理組織学的には膵実質萎縮部分の一部に核腫大し不規則に重積した上皮内癌相当の病変を認めた。膵管周囲には腺房の脱落と線維化がみられた。細胞診・組織診で未確定の限局性萎縮病変に対する治療方針について討論を頂きたい。
