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O-26 発生由来の異なるnon-invasive IPMCとHigh-grade PanINが併存した1例

○川本 裕介1)、山中 良輔1)、松永 雄太郎1)、大目 祐介1)、本田 五郎1)、高山 敬子2)、菊山 正隆2)、中井 陽介2)、古川 徹3)
1)東京女子医科大学 消化器・一般外科、2)東京女子医科大学 消化器内科、3)東北大学大学院 医学系研究科 病態病理学分野


 症例は70歳男性。膵頭部の最大径3cm大の多房性嚢胞性病変を指摘され、8年前に紹介受診。CT・MRIから分枝型IPMNと診断し、画像フォローを行っていた。もともと部分的な嚢胞壁の肥厚を認めていたが、経時的に結節状に変化し、2年前のCTでは造影効果が確認されるようになり、超音波内視鏡検査(EUS)でも造影効果を伴う6mmの壁在結節を認めたことから、同年、連続膵液細胞診(SPACE)を行ったが、low-grade dysplasia相当の異型度までに留まる診断であった。ただ、結節はさらに増大し、2年後にはEUS上16mm大となったため、SPACEを再検したところ、High-grade dysplasia相当の異型度の細胞が検出されたため、手術の方針とした。一方、術前のCT・MRIで、膵頭部の嚢胞性病変に隣接するように膵頚部に限局性膵萎縮(FPPA)と主膵管の限局性拡張、その尾部側に微小嚢胞の集簇を認めた。膵頭部IPMCに膵頚部のPanINが併存している可能性も考慮し、Aorta左縁で膵切離を行う膵頭十二指腸切除術を施行した。病理検査の結果、膵頭部の混合型IPMC(non-invasive)とともに、FPPAの部位に一致してHigh-grade PanINが認められた。後者でのみp53の発現喪失が確認され、遺伝子解析で前者ではKRAS G12V、GNAS R201Hの変異が認められたのに対し、後者はKRAS G12D、GNAS WTの変異があり、別の由来の腫瘍であると考えられた。発生由来の異なるIPMCとHigh-grade PanINが併存した症例を経験したので報告する。