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O-8 Rokitanski-Achoff sinus(RAS)内に発生したIntracholecystic papillary neoplasm(ICPN)の一例

○山中 良輔1)、川本 裕介1)、大目 祐介1)、本田 五郎1)、菊山 正隆2)、中井 陽介2)、古川 徹3)
1)東京女子医科大学病院 消化器・一般外科、2)東京女子医科大学大病院 消化器内科、3)東北大学大学院医学系研究科 病態病理学部門


 症例は73歳男性。胆嚢底部の嚢胞性病変を指摘され当院に紹介となった。腹部超音波検査および超音波内視鏡検査で、分節型胆嚢腺筋腫症のほか、胆嚢底部に拡張したRokitanski-Achoff sinus (RAS)を疑う複数の嚢胞性病変を認めた。嚢胞は最大径43mmに及び、さらに嚢胞内には高エコーを呈する内腔側隆起性病変を認めた。MRIでも胆嚢底部に複数の嚢胞性病変が確認され、隔壁構造とその一部に腫瘤状の隆起を認めたが、拡散制限は伴わなかった。また、造影CTでは、腫瘤状の隔壁部分の造影効果は明らかではなく、胆嚢粘膜のmucosal lineは保たれていた。以上より、進行癌は疑わないが、粘液産生能を有する腫瘍性病変がRAS内に発生した可能性があると考え、腹腔鏡下全層胆嚢摘出術を施行した。切除標本では胆嚢底部に嚢胞性病変を認め、内容物は粘液であった。肉眼上、嚢胞内に乳頭状隆起を認めた。病理組織像では、発達したRAS内に粘液性胞体を持つ高異型度上皮が乳頭状に増殖しており、RAS内に発生したintracholecystic papillary noplasm (ICPN), high-grade/carcinoma in situと診断した。 術前画像から、粘液産生能を有する腫瘍性病変の存在を予想し、根治手術を行ったICPNの症例を経験した。一方で、限局型胆嚢腺筋腫症との鑑別に苦慮する症例も多い。術前画像から癌の存在を疑うことのできる画像所見について検討したい。