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症例は70歳代男性。体重減少を主訴に当院を受診し、血液検査でCA19-9値の上昇と腹部単純CT検査で主膵管拡張を認めた。腹部造影MRI検査で膵頭部主膵管内に漸増性に造影される30mm大の腫瘤と尾側の主膵管拡張を認め、超音波内視鏡検査では膵頭部主膵管内に鋳型状に充満する低エコー腫瘤を認めた。ERCPと経口膵管鏡を施行し、膵頭部主膵管内に乳頭状腫瘍を認めたが、膵管口開大等の粘液産生所見は認めなかった。腫瘍生検では高度異型上皮を認め、免疫染色でMUC5AC陰性かつ膵管内発育腫瘍であることからITPNと診断した。膵外への明らかな浸潤所見やリンパ節腫大は認めず、Upfrontで膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理では主膵管内で管状・篩状に増殖する浸潤性腺癌を認め、十二指腸固有筋層浸潤と領域リンパ節への転移を伴っていた。主膵管内の主病巣は充実性腫瘍であり、小葉を置換するような膵実質への浸潤形式はITPN様であったが、分枝膵管へ微小乳頭状の上皮内進展を呈している点や、膵外への浸潤は非小葉置換性で散在性である点は膵管癌様の所見であった。免疫染色ではMUC1陰性、MUC2陰性、MUC5AC陰性、MUC6部分陽性、bcl-10陰性であり、がん遺伝子パネル検査ではKRAS変異とTP53変異を認め、総合的に膵管癌と診断した(fT3N1aM0,fStageIIB)。本症例において画像所見より膵管内発育型の膵管癌と診断可能か、また病理所見から膵管内進展の理由が推測されるかご討議いただきたい。
P-1 膵管内管状乳頭腫瘍 (ITPN)との鑑別が困難であった膵管癌の1例
○佐藤 亮介1)、藤井 佑樹1)、宇賀 麻由2)、高木 弘誠3)、西田 賢司4)、内田 大輔1)、堤 康一郎1)、堀口 繁1)、松本 和幸1)、大塚 基之1)
1)岡山大学病院 消化器内科、2)岡山大学病院 放射線科、3)岡山大学病院 肝胆膵外科、4)岡山大学病院 病理診断科
症例は70歳代男性。体重減少を主訴に当院を受診し、血液検査でCA19-9値の上昇と腹部単純CT検査で主膵管拡張を認めた。腹部造影MRI検査で膵頭部主膵管内に漸増性に造影される30mm大の腫瘤と尾側の主膵管拡張を認め、超音波内視鏡検査では膵頭部主膵管内に鋳型状に充満する低エコー腫瘤を認めた。ERCPと経口膵管鏡を施行し、膵頭部主膵管内に乳頭状腫瘍を認めたが、膵管口開大等の粘液産生所見は認めなかった。腫瘍生検では高度異型上皮を認め、免疫染色でMUC5AC陰性かつ膵管内発育腫瘍であることからITPNと診断した。膵外への明らかな浸潤所見やリンパ節腫大は認めず、Upfrontで膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理では主膵管内で管状・篩状に増殖する浸潤性腺癌を認め、十二指腸固有筋層浸潤と領域リンパ節への転移を伴っていた。主膵管内の主病巣は充実性腫瘍であり、小葉を置換するような膵実質への浸潤形式はITPN様であったが、分枝膵管へ微小乳頭状の上皮内進展を呈している点や、膵外への浸潤は非小葉置換性で散在性である点は膵管癌様の所見であった。免疫染色ではMUC1陰性、MUC2陰性、MUC5AC陰性、MUC6部分陽性、bcl-10陰性であり、がん遺伝子パネル検査ではKRAS変異とTP53変異を認め、総合的に膵管癌と診断した(fT3N1aM0,fStageIIB)。本症例において画像所見より膵管内発育型の膵管癌と診断可能か、また病理所見から膵管内進展の理由が推測されるかご討議いただきたい。