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症例は66歳男性。動悸、呼吸苦が出現し、当院外来を受診した。Hb 5.6 g/dL,MCV 88.3fLと高度な正球性貧血があり、ALP 134U/L,γ-GTP 136U/Lと胆道系酵素が上昇していた。膵酵素(アミラーゼ 52 U/L)と腫瘍マーカー(CEA 0.8U/mL, CA19-9 6.5 U/mL)は正常範囲内であった。腹部超音波検査で膵頭部に径75×35mmの低エコー腫瘤があり、造影CT(dynamic study)では早期濃染する内部不均一な径80×35㎜の腫瘤を認めた。膵管と胆管の拡張はなかったが、十二指腸への浸潤を疑った。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸乳頭の口側に、膵腫瘤の粘膜下浸潤があり、同部位が出血源と考えた。MRIでは膵頭部に80㎜大の分葉状~多結節状腫瘤で、T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号であり、DWIで高信号、ADC mapで低信号と拡散制限があった。超音波内視鏡(EUS)では膵頭部に低エコー腫瘤があり、膵管の拡張なく、腫瘤内には小嚢胞を散見した。造影EUSでは早期に濃染され、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行したが、穿刺吸引時に出血したため、組織採取できず確定診断に至らなかった。3週間後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った。HE染色では異型細胞が索状/リボン状に配列しており、免疫組織化学染色ではsynaptophysinとCD56を発現していた。核分裂数は高倍率(50倍)視野で1つ、MIB-1標識率は1%以下であり、NET Grade1と診断した。今回、消化管出血を伴ったNET(Grade1)の一例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
P-12 消化管出血を伴った膵神経内分泌腫瘍(NET)の一例
○中村 亮介1)、松岡 大介1)、後野 徹宏1)、田中 利幸1)、平塚 裕晃1)、永山 林太郎1)、丸尾 達1)、植木 敏晴1)、甲斐田 大貴2)、二村 聡3)
1)福岡大学筑紫病院 消化器内科、2)福岡大学筑紫病院 外科、3)福岡大学筑紫病院 病理部病理診断科
症例は66歳男性。動悸、呼吸苦が出現し、当院外来を受診した。Hb 5.6 g/dL,MCV 88.3fLと高度な正球性貧血があり、ALP 134U/L,γ-GTP 136U/Lと胆道系酵素が上昇していた。膵酵素(アミラーゼ 52 U/L)と腫瘍マーカー(CEA 0.8U/mL, CA19-9 6.5 U/mL)は正常範囲内であった。腹部超音波検査で膵頭部に径75×35mmの低エコー腫瘤があり、造影CT(dynamic study)では早期濃染する内部不均一な径80×35㎜の腫瘤を認めた。膵管と胆管の拡張はなかったが、十二指腸への浸潤を疑った。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸乳頭の口側に、膵腫瘤の粘膜下浸潤があり、同部位が出血源と考えた。MRIでは膵頭部に80㎜大の分葉状~多結節状腫瘤で、T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号であり、DWIで高信号、ADC mapで低信号と拡散制限があった。超音波内視鏡(EUS)では膵頭部に低エコー腫瘤があり、膵管の拡張なく、腫瘤内には小嚢胞を散見した。造影EUSでは早期に濃染され、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行したが、穿刺吸引時に出血したため、組織採取できず確定診断に至らなかった。3週間後に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った。HE染色では異型細胞が索状/リボン状に配列しており、免疫組織化学染色ではsynaptophysinとCD56を発現していた。核分裂数は高倍率(50倍)視野で1つ、MIB-1標識率は1%以下であり、NET Grade1と診断した。今回、消化管出血を伴ったNET(Grade1)の一例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。