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P-19 膵管癌が否定できず切除を行った良性主膵管狭窄の1例

○安藤 公隆1)、大岩 立学1)、白井 信太郎1)、大澤 高陽1)、齊藤 卓也1)、深見 保之1)、小松 俊一郎1)、金子 健一朗1)、柳澤 昭夫2)、佐野 力1)
1)愛知医科大学 消化器外科、2)京都第一赤十字病院 病理診断科


 症例は58歳、女性。検診で血清CA19-9高値(44.6U/ml)を指摘されて当院を紹介受診。MRCPでは膵頭部主膵管が1.7cmにわたって陰影欠損し、尾側主膵管の軽度拡張を認めた。ERCPでは膵頭体移行部で主膵管が狭窄し、この尾側主膵管が軽度拡張していた。EUS, CT, MRIでは主膵管狭窄部周囲には明らかな腫瘤は認めなかった。膵管ステント(ENPD)留置での膵液連続細胞診は陰性であったが、膵管癌(Tis)が否定できず膵頭十二指腸切除術を実施。術中の膵断端迅速組織診では悪性像を認めず。切除標本の膵管造影では膵頭部の主膵管に明らかな狭窄を認めなかった。切除膵は病理組織学的には、主膵管狭窄部周辺に腫瘤はなく線維化のみを認め、主膵管上皮にも周囲の腺房にも異型細胞は認めなかった。末梢分枝膵管に粘液細胞過形成(PAN-IN 1相当のIPMN)が見られ、ここから分泌された粘液により一過性の主膵管閉塞を反復し、その度に周囲に炎症が起こり線維化を生じたと考えられた。術前に高値であった血清CA19-9値は術後に基準値以下に低下し、術後1年間再上昇を認めていない。