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症例は83歳女性。心窩部不快感で前医を受診。ERPで主膵管の拡張と膵管内に造影欠損域が認められ、細胞診で腺癌を疑う所見が検出されたため、当院に紹介された。腹部エコーで膵頭部に10mmの境界不明瞭な低エコー腫瘤が、造影CTで膵体尾部の主膵管拡張と頭側に乏血性腫瘤が確認された。同腫瘤はMRIの拡散強調画像で拡散制限がみられ、PET-CTではSUVmax 7.0の集積があった。EUSでは、主膵管内に鋳型状の低エコー腫瘤が観察された。以上より臨床診断は浸潤性膵管癌、鑑別としてITPNやIPMCが挙げられ、膵頭十二指腸切除術が施行された。切除標本の病理所見では、主膵管内にポリポイド状の増殖を示す癌腫が確認され、管状〜充実性の浸潤癌の様相を呈した(病変A)。この癌腫はMUC5ACを発現し、髄様性発育を含む腺癌であった。また、近傍にhigh-grade PanIN/CIS病変が認められ、高度な炎症反応を伴い、偽浸潤ないし微小浸潤癌が疑われる部位もあった(病変B)。遺伝子検査では、病変A・BともにMSH2とMSH6の欠失があり、RAS/BRAF検査でKRAS-G12D変異が確認された。免疫染色で、病変AでPTENの欠失、病変BでATRXの欠失が見られた。以上より、同一起源の膵管上皮性腫瘍が異なる分子異常により異なる形態を示している可能性が示唆された。
【検討項目】1. 病変Aの臨床画像所見でITPNとどう鑑別するか、2. 病変Aと病変Bの病理診断、3. dMMR膵がんの臨床病理学的特徴についてご教授いただきたい。
P-2 膵管内にポリポイド状発育を示したdMMR早期膵癌の1例
○土井 拓矢1)、石渡 裕俊1)、佐藤 純也1)、坂本 拡基1)、山村 昌大1)、大池 信之2,3)、野呂瀬 朋子2,3)、角田 優子2)、杉野 隆2)、杉浦 禎一4)
1)静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科、2)静岡県立静岡がんセンター 病理診断科、3)聖マリアンナ医科大学 病理学講座、4)静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科
症例は83歳女性。心窩部不快感で前医を受診。ERPで主膵管の拡張と膵管内に造影欠損域が認められ、細胞診で腺癌を疑う所見が検出されたため、当院に紹介された。腹部エコーで膵頭部に10mmの境界不明瞭な低エコー腫瘤が、造影CTで膵体尾部の主膵管拡張と頭側に乏血性腫瘤が確認された。同腫瘤はMRIの拡散強調画像で拡散制限がみられ、PET-CTではSUVmax 7.0の集積があった。EUSでは、主膵管内に鋳型状の低エコー腫瘤が観察された。以上より臨床診断は浸潤性膵管癌、鑑別としてITPNやIPMCが挙げられ、膵頭十二指腸切除術が施行された。切除標本の病理所見では、主膵管内にポリポイド状の増殖を示す癌腫が確認され、管状〜充実性の浸潤癌の様相を呈した(病変A)。この癌腫はMUC5ACを発現し、髄様性発育を含む腺癌であった。また、近傍にhigh-grade PanIN/CIS病変が認められ、高度な炎症反応を伴い、偽浸潤ないし微小浸潤癌が疑われる部位もあった(病変B)。遺伝子検査では、病変A・BともにMSH2とMSH6の欠失があり、RAS/BRAF検査でKRAS-G12D変異が確認された。免疫染色で、病変AでPTENの欠失、病変BでATRXの欠失が見られた。以上より、同一起源の膵管上皮性腫瘍が異なる分子異常により異なる形態を示している可能性が示唆された。
【検討項目】1. 病変Aの臨床画像所見でITPNとどう鑑別するか、2. 病変Aと病変Bの病理診断、3. dMMR膵がんの臨床病理学的特徴についてご教授いただきたい。