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【症例】52歳女性
【現病歴】40歳頃から毎年人間ドックを受診していた。2022年12月の人間ドックでの腹部超音波検査で膵尾部に嚢胞を指摘され、2023年2月に当科紹介された。EUSでは膵尾部に9mmまでの嚢胞を複数認めたが、内部に結節は認めず主膵管の口径不同や膵実質の腫瘤も認めなかった。 ERCPでは尾部嚢胞は描出されず、主膵管狭窄及び上流の主膵管拡張を認めた。狭窄部をカテーテル突破したところ、狭窄は改善された。膵管洗浄細胞診・ENBD下膵液細胞診を施行したが、class2までの結果であった。厳重な経過観察を行っていたところ、6月のMRCPで嚢胞増大と膵管拡張の増強を認め、再度EUS・ERCPを施行した。EUSで拡張膵管の起始部に辺縁不整な低エコー域を認め、ERCPでは尾部の狭窄部で膵管は蛇行し、狭窄部近傍の分枝拡張も認めた。経乳頭的細胞診 はclass3であったが、経過から微小膵癌と考え、膵体尾部切除の方針とした。切除標本では広範囲にlow grade PanINを認め、膵管狭窄部近傍分枝に、high grade PanINと思われる構築が不規則な高度異型上皮が周囲に線維化を伴って分布していた。
【考察】線維化を誘導している分枝膵管内のhigh grade PanINのフェノタイプにより、数ヶ月で膵管に変化をもたらしたのか、ERCPが腫瘍増殖や線維化を加速させた可能性はないか。また、経乳頭的細胞診の採取方法・診断の妥当性、術前細胞診陰性時の経過観察方法について御討議していただきたい。
P-20 膵管像の変化により切除し得た膵上皮内癌の1例
○佐々木 啓壮1)、河瀬 智哉1)、三宅 智雄1)、佐藤 辰貴1)、多田 大和1)、佐貫 史明3)、岡田 敏正2)、上野 富雄2)、柳澤 昭夫4)、吉田 浩司1)
1)川崎医科大学附属病院 消化器内科、2)川崎医科大学附属病院 消化器外科、3)川崎医科大学附属病院 病院病理部、4)京都第一赤十字病院 病理診断科
【症例】52歳女性
【現病歴】40歳頃から毎年人間ドックを受診していた。2022年12月の人間ドックでの腹部超音波検査で膵尾部に嚢胞を指摘され、2023年2月に当科紹介された。EUSでは膵尾部に9mmまでの嚢胞を複数認めたが、内部に結節は認めず主膵管の口径不同や膵実質の腫瘤も認めなかった。 ERCPでは尾部嚢胞は描出されず、主膵管狭窄及び上流の主膵管拡張を認めた。狭窄部をカテーテル突破したところ、狭窄は改善された。膵管洗浄細胞診・ENBD下膵液細胞診を施行したが、class2までの結果であった。厳重な経過観察を行っていたところ、6月のMRCPで嚢胞増大と膵管拡張の増強を認め、再度EUS・ERCPを施行した。EUSで拡張膵管の起始部に辺縁不整な低エコー域を認め、ERCPでは尾部の狭窄部で膵管は蛇行し、狭窄部近傍の分枝拡張も認めた。経乳頭的細胞診 はclass3であったが、経過から微小膵癌と考え、膵体尾部切除の方針とした。切除標本では広範囲にlow grade PanINを認め、膵管狭窄部近傍分枝に、high grade PanINと思われる構築が不規則な高度異型上皮が周囲に線維化を伴って分布していた。
【考察】線維化を誘導している分枝膵管内のhigh grade PanINのフェノタイプにより、数ヶ月で膵管に変化をもたらしたのか、ERCPが腫瘍増殖や線維化を加速させた可能性はないか。また、経乳頭的細胞診の採取方法・診断の妥当性、術前細胞診陰性時の経過観察方法について御討議していただきたい。