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P-24 診断に苦渋した膵尾部嚢胞性病変に対して外科的切除を行った若年女性の1例

○山本 佳穂、香川 幸一
けいゆう病院 内科


 症例は30代女性。心窩部痛を主訴に近医を受診し、上腹部エコーにて膵尾部に嚢胞を指摘されたため、当院紹介となった。血液検査にて軽度の炎症反応上昇を認め、造影CTを撮影したところ、膵尾部に48mm大の二房性嚢胞性病変を認めた。膵嚢胞周囲には明確な壁を伴っていたが、明らかな充実成分や石灰化を認めなかった。初回のCT撮影より1か月後に発熱と心窩部痛を主訴に来院し、骨盤内膿瘍を伴う急性穿孔性虫垂炎の診断となり、抗菌薬による保存的加療を行い軽快した。膵嚢胞に対する造影MRIでは拡散協調画像における拡張制限領域やdynamic造影での造影結節は認めず、主膵管拡張や膵管との交通も認めなかったEUSでは厚さ1.8mmの境界明瞭な被膜を有し、嚢胞は内部無エコーを背景として点状高エコーを伴っていた。いずれの画像検査においても膵実質への浸潤所見はなく、術前診断として膵リンパ上皮嚢胞、粘液性嚢胞腫瘍、充実性偽乳頭状腫瘍などを鑑別に挙げ、膵実質腹腔鏡下虫垂切除術、および、膵体尾部脾合併切除術を施行した。病理組織所見では、嚢胞壁は一部硝子化し、嚢胞内腔は胞体内に粘液を貯留する異型に乏しい円柱状細胞に裏打ちされ、上皮下にはプロゲステロンレセプター、エストロゲンレセプター陽性の卵巣様間質を認め、膵粘液性嚢胞腺腫(mucinous cyst adenoma:MCA)と診断した。