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P-25 膵近傍に発生したDermoid cystの1例

○川﨑 佑輝、牛尾 純、加藤 久貴、石田 幸子、角 一弥、松尾 海、出口 義雄
昭和大学江東豊洲病院 消化器センター


 症例は薬剤抵抗性逆流性食道炎に対して内視鏡治療を施行した60代、女性。CTで偶発的に膵尾部近傍に低吸収腫瘤を指摘された。血液検査所見ではCA19-9が異常高値であった。造影CTでは全体的に造影効果に乏しく、一部に類円形の造影効果を有するのみであった。EUSでは一部を除き均一な低エコーを呈し、不均一な部位は嚢胞形態を示しており、嚢胞壁に著明な造影効果を有していた。嚢胞隔壁は厚く、EUS-TAによる組織学的な診断が可能と考えた。22G Acquireで穿刺したところ、灰白色の泥状の液体が採取され、core検体はほとんど採取できなかったが、病理組織学的に扁平上皮が確認できた。EUS-TAの際に内視鏡クリップを除去し、造影MRIを施行したところ、腫瘤全体が嚢胞性でありcyst in cystの所見を呈していた。以上より奇形腫を疑い、腹腔鏡下の腫瘤核出術を施行した。一部は膵と高度に癒着していた。腫瘤割面は多房性嚢胞の形態を示しており、内部は白色物質が充満していた。病理組織学的に嚢胞壁は皮脂腺を伴う異型のない扁平上皮によって構成され、上皮下に高度の炎症細胞浸潤がみられ嚢胞壁が肥厚していた。内腔にはケラチン様物質が貯留していた。以上よりDermoid cystと診断した。Dermoid cystは全卵巣腫瘍の約20%を占め、診断も容易とされているが、膵のDermoid cystは特徴的な所見を呈さないことが多く術前診断は困難である。卵巣Dermoid cystの診断学を基に本症例を考察し報告する。