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P-32 膵萎縮を伴う主膵管狭窄を認めた非腫瘍性病変の一例

○三輪田 哲郎1)、山田 玲子1)、村田 泰洋2)、松井 健汰3)、湯淺 博登3)、大和 浩乃1)、野瀬 賢治1)、田中 隆光1)、中村 佳史1)、中川 勇人1)
1)三重大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科、2)三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科、3)三重大学医学部附属病院 病理診断科


 73歳、男性。S状結腸癌の術後経過観察目的のCTで主膵管拡張を指摘され精査目的に当科に紹介された。血液検査で異常値はなかった。ダイナミックCT上は膵尾部に主膵管狭窄と尾側膵管の拡張を認め、膵体部に限局的な膵実質の萎縮もみられた。また、膵頭部に長径36㎜の多房性嚢胞を認め、充実性腫瘤は認めなかった。MRI,MRCPもCTと同様の所見であった。EUSでもCT,MRIと同様に膵尾部の主膵管拡張と尾側膵管の拡張を認め、充実性腫瘤は認めなかった。ERCP直前に偶発的に認めた右胃大網動脈瘤に対するコイル塞栓術を施行し、その際の腹腔動脈造影では血管に異常は指摘されなかった。ERCPを施行すると膵管造影で膵尾部に主膵管の不整な狭窄を認め、尾側膵管は拡張していた。徐々に造影の圧を上げると狭窄は拡張した。主膵管の狭窄部に対しブラシ擦過細胞診を提出し、狭窄部分を超えてENPDチューブを留置して手技を終了した。ブラシ擦過細胞診、連続膵液細胞診は共に悪性所見は認めなかったが早期膵癌を疑い、ロボット支援下脾温存膵体尾部切除術を施行した。病理組織上、膵管の内腔が線維性に狭窄している部位を認め、背景の膵実質には線維化や腺房の萎縮が観察されたが、膵管狭窄の原因となる病変は明らかではなく腫瘍性病変も認めなかった。術前の画像診断で非腫瘍性病変の可能性を示唆する所見として何に着目すべきか、また病理組織上狭窄や膵萎縮の原因となる病変の存在がないかどうかの二点について御討論いただきたい。