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症例は73歳の男性。経過観察されていた膵頭部の嚢胞性病変が増大傾向を示し、当院へ紹介となった。腹部エコーでは、膵頭部に51×39mm大の嚢胞性腫瘤を認め、内部には隔壁様構造と辺縁の不整な充実部を認めた。腹部造影CTでは膵頭部の嚢胞性腫瘤は単房性であり、一部には造影効果を有する壁肥厚を認めた。MRIでは嚢胞内容はT1WI・T2WIともに高信号、尾側の壁在結節はDWIでやや高信号を示し、MRCPでは嚢胞性腫瘍と膵管の交通は明らかではなかった。PET-CTでは壁肥厚部に一致してSUV max:3.4~5.0の異常集積を認めた。乳頭の開大や粘液排出は認めず、ERPでは嚢胞性病変の描出はされなかった。EUS-FNAで嚢胞内容液の細胞診と壁肥厚部の組織診を行った。嚢胞内容液はやや粘性な血性成分を含んでおり、細胞診ではadenocarcinomaの診断であった。壁肥厚部の組織診では一部に粘液を含有する上皮組織を認めたが確定診断には至らなかった。以上より、IPMC、IPMN併存膵癌やMCNなどを疑い、膵頭十二指腸切除術を行った。摘出標本の肉眼所見では、65x60mmの内部に黒色調の粘液を含有した嚢胞性病変を認め、嚢胞壁の一部に白色調の壁肥厚を伴っていた。組織学的には、低~高異型度のIPMNとそれに連続して上皮下に浸潤増殖する扁平上皮癌の所見を認め、IPMN由来腺扁平上皮癌と診断した。
【検討したいポイント】術前診断は妥当か、術前画像で腺扁平上皮癌を示唆する所見はあったかなど検討頂きたい。
P-8 IPMN由来腺扁平上皮癌の1例
○新井 相一郎1)、赤司 昌謙1)、島松 裕2)、寺部 寛哉2)、谷川 雅彦3)、中山 正道3)、酒井 久宗1)、田上 利佳4)、内藤 嘉紀5)、久下 亨1)
1)久留米大学病院 外科学講座、2)久留米大学病院 内科学講座消化器内科部門、3)久留米大学病院 病理学講座、4)久留米大学病院 放射線医学教室、5)久留米大学病院 臨床検査部
症例は73歳の男性。経過観察されていた膵頭部の嚢胞性病変が増大傾向を示し、当院へ紹介となった。腹部エコーでは、膵頭部に51×39mm大の嚢胞性腫瘤を認め、内部には隔壁様構造と辺縁の不整な充実部を認めた。腹部造影CTでは膵頭部の嚢胞性腫瘤は単房性であり、一部には造影効果を有する壁肥厚を認めた。MRIでは嚢胞内容はT1WI・T2WIともに高信号、尾側の壁在結節はDWIでやや高信号を示し、MRCPでは嚢胞性腫瘍と膵管の交通は明らかではなかった。PET-CTでは壁肥厚部に一致してSUV max:3.4~5.0の異常集積を認めた。乳頭の開大や粘液排出は認めず、ERPでは嚢胞性病変の描出はされなかった。EUS-FNAで嚢胞内容液の細胞診と壁肥厚部の組織診を行った。嚢胞内容液はやや粘性な血性成分を含んでおり、細胞診ではadenocarcinomaの診断であった。壁肥厚部の組織診では一部に粘液を含有する上皮組織を認めたが確定診断には至らなかった。以上より、IPMC、IPMN併存膵癌やMCNなどを疑い、膵頭十二指腸切除術を行った。摘出標本の肉眼所見では、65x60mmの内部に黒色調の粘液を含有した嚢胞性病変を認め、嚢胞壁の一部に白色調の壁肥厚を伴っていた。組織学的には、低~高異型度のIPMNとそれに連続して上皮下に浸潤増殖する扁平上皮癌の所見を認め、IPMN由来腺扁平上皮癌と診断した。
【検討したいポイント】術前診断は妥当か、術前画像で腺扁平上皮癌を示唆する所見はあったかなど検討頂きたい。