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PL-3 漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)との鑑別が困難だった浸潤性膵管癌の一例

○前川 有里1)、三重 尭文1)、小野 嘉大3)、高松 学2)、平井 達基1)、岡本 武士1)、武田 剛志1)、佐々木 隆1)、笹平 直樹1)
1)がん研有明病院 肝胆膵内科、2)がん研有明病院 病理部、3)がん研有明病院 外科


【症例】73歳女性。心窩部痛を契機に膵腫瘤を指摘され、受診した。CT,MRI,EUSで膵頭部に小嚢胞の集簇を主体とした腫瘤を認め、SCN疑いとしたが、2ヶ月後に閉塞性黄疸を来した。
【画像所見】造影CT:膵頭部に48mm大の内部不均一な低濃度腫瘤を認め、総胆管下端を閉塞する20mm大の遅延濃染域を認めた。腫瘤の内部を狭小化した主膵管が貫通し、尾側膵管の拡張を伴っていた。MRI:病変の辺縁を中心に多数の微小嚢胞を認めた他、膵体尾部にも小嚢胞が散在していた。EUS:5mm以下の多数の小嚢胞を含有する42mm大の低エコー腫瘤を認め、胆管閉塞部の周囲は均一な低エコーを呈していた。低エコー部を含め、ソナゾイド造影では早期相で均一な造影効果を認めた。
【経過】胆管閉塞部近傍の低エコー部に対してEUS-FNAを施行し、粘液産生を伴う異形の弱い円柱状細胞が採取された。ERCP下胆管生検でも同様の結果であった。短期間に閉塞性黄疸を呈した充実性腫瘤であり、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った。切除標本は、嚢胞状の病変と白色調の充実病変を認めた。充実部は高分化腺癌で、十二指腸の粘膜固有層まで浸潤し、リンパ節への転移を認めた。周囲の嚢胞部分はIPMAの所見であった。
【結語】濃染性の小嚢胞集簇所見からSCNを第一に考えたが、術前画像で浸潤性膵管癌と診断できる所見があったのか、また病理的に嚢胞部と腺癌部の関係性をご検討いただきたい。