室内の明るさに合わせてページ背景の明るさを調整してください。


PL-6 限局性膵萎縮を契機に発見し得た、早期膵癌の一例

○森下 広睦1)、蘆田 玲子1)、三笠 友理奈2)、中畑 明耶1)、川路 祐輝1)、田村 崇1)、山下 泰伸1)、糸永 昌弘1)、北野 雅之1)
1)和歌山県立医科大学附属病院 消化器内科、2)和歌山県立医科大学附属病院 病理診断科


 症例は66歳男性。腰背部痛を契機に撮像されたCT、MRCPで膵体部に限局性萎縮と尾側の膵管拡張を認めたため、当院を紹介受診した。血液検査では特記事項はなかった。造影CT、造影MRIでは、膵体部に限局性の膵実質萎縮を認めたが、腫瘤像は指摘されなかった。MRCPでは実質萎縮部に一致して主膵管の狭窄を認め、尾側主膵管の軽度拡張を認めた。EUSでは膵実質萎縮部の頭側に5mm大、尾側に5mm大の周囲膵実質より低エコーな腫瘤を認め、それぞれSonazoid注入後は1分でhypovascular massとして観察された。ERPでは膵体部に約45mm長の主膵管の部分的な狭細化と、壁の不整を認めた。SPACEで5Frの留置カテーテルから4回採取した細胞診はclassⅢで、K-RAS変異は認めなかった。しかし上皮内癌の可能性が否定できず、膵体尾部切除術+D2郭清が施行された。
 病理組織学的には膵実質萎縮部は脂肪変性と、線維化に置換され、正常なランゲルハンス島は消失していた。同部位の主膵管はLow-grade PanINとHigh-grade PanINが混在し、膵実質萎縮部の頭側から6mm尾側方向に、径6mmの浸潤性膵管癌を認めた。膵実質萎縮部の尾側には癌は認めなかった。頭部側断端は陰性で、pT1b, pN0, M0, pStageⅠAの診断であった。術後5年の経過で再発は認めていない。

 本症例の術前の画像所見と切除標本を詳細に検討し、術前に診断することが可能であったのか討論を希望します。